この章では、事故や危険な状態につながりかねない潜在的な要因を考えてみます。
危険を大きく分類すると、下記のように人的要因、物的要因、環境要因の3つに分けられます。
・人的要因 … 体力・運動能力、行動・態度、意識・感情など。
・物的要因 … 服装、用具など。
・環境要因 … 天候、場所、交通機関など。
ここでは、各要因について掲げた内容について触れながら、安全に活動するためのチェックポイントと対応について解説しています。
(1)参加者の体力・運動能力
自然体験活動では、実際に身体を動かす活動が含まれるため、参加者の基礎的な体力や運動能力について確認が必要な場合があります。例えば、以下のような観点で、参加者を評価してみて、活動計画が妥当かどうか検討してみましょう。
![]()
- 持続性:時間枠の中で、持続的に活動に取り組めるか。
- 敏捷性:とっさの時や、急な場面で俊敏な対応ができるか。
- 筋 力:課題を達成するための基礎的な筋力が備わっているか。
- 協応性:手と足の調整力、力発揮の制御、バランス感覚などが備わっているか。

体力・運動能力に関しては、参加者のレベルに応じた無理のない計画を立てることはもちろんですが、実施場面では、弱者に合わせて行動することが大原則です。また、参加者の中に障がい者が含まれていたり、ケガ人と共に活動せざるを得ない場合には、十分な対応と配慮ができるように準備をしておきましょう。
先々に、標高が高い山への登山や長距離・長時間におよぶ遠征など、大きな活動を控えている場合は、十分なトレーニングを積んでおくことが、事故を未然に防ぐだけでなく、充実した活動につながります。
(2)参加者の行動・態度
チェックポイントをいくつかあげてみました。以下のような観点で、参加者を評価してみましょう

- ルール:ルールや公正さを無視した行動。
- マナー:マナーや公平さを忘れた行動。
- 自己流:基礎・基本を忘れた行動、手順を無視した行動。
- 無 知:必要な知識を取り入れない行動、無謀な行動。
- 軽 率:いたずら、わがまま、自分勝手などの逸脱行動、物事を甘くみた行動。
- 技 量:技術や能力が伴わず技量を超えた行動。

実際の活動場面でこのような行動・態度が見られる場合は、事故やトラブルに発展する可能性があります。参加者の行動をよく観察することが大切です。また普段からこのような行動を示す参加者は、「問題傾向児」としてより注意を注ぎ、適宜介入しながら活動する必要があるでしょう。
本当の意味で行動や態度の改善を促すには、場当たり的に怒ったり、叱ったりするだけでは、変化が期待できません。まずは、共感する姿勢に努めながら本人の言い分を聴いてみましょう。キーワードは、その時「どんな気持ち・感情」で「どんなことを考えて」行動していたかです。
その上で、「なぜ、良くない行動なのか」を理解させることが大切です。このやり取りを繰り返し、反復する忍耐力が、指導者には必要となるでしょう。
また、集団の力を信頼して、参加者同士で「問題行動を戒めあう関係づくり」も大事になってきます。
指導者は、日々の実践の中で参加者の「行動・態度を観察する力」「話を聴く力」「感情を受け止める力」「考えや思いを伝える力」「集団を活用する力」などを養い、高めていきましょう。
(3) 参加者の意識・感情
チェックポイントをいくつかあげてみました。以下のような観点で、参加者を評価してみましょう。

- 感情的抵抗:不安、恐怖心、居心地の悪さ、不快感など。
- 意識の固定:悩み、囚われ、思い込み、強い執着など。
- 注意力散漫:落ち着きのなさ、ぼんやりなど。
- 意識の低下:疲れ、居眠りなど。
- 意識の高揚:興奮状態など。
- 意識の急迫:焦り、あがり、緊張など。

このような意識や感情の状態が長く続いたり、度を越している場合は、非常に危険です。
活動前や導入段階では、参加者の体調や疲れぐあい、睡眠時間、食事摂取の有無などを確認したり、やる気・意欲などを評価して、意識や感情に影響を及ぼしそうな点の把握に努めましょう。また、その日の活動の流れ、休憩の目安などを予め参加者に伝えておくことは、意欲や集中力を高めるのに役立ちます。体のウォーミングアップ同様に、意識・感情のウォーミングアップを図る工夫をしましょう。
活動中は、参加者の様子や反応から意識や感情状態を推測し、休憩を入れたり、行動食や水分の補給をして「心と体のリフレッシュ」を図りましょう。必要な場合は、動機づけや意識の喚起を改めて行い、次の活動に取り組めるような配慮も必要です。
(4) 服装
自然体験活動には、それぞれの活動に適した服装や装備が必要です。自然体験活動の服装はファッションショーではないので、指導者は、シャツのボタンを全てはずしていたり、シャツのすそを出すなどだらしのない格好をしないようにします。保護者が、子どもを参加させることに不安を持たないように指導者自身、服装のみだれを正すように心がけましょう。
チェックポイントをいくつかあげてみました。
以下のような観点で、参加者の服装を評価してみましょう。

- 頭 :帽子などの保護がない、帽子が大きすぎる
- 目 :まぶしさを防いでいない
- 服 :活動に適さない、長い・大きすぎる、短い・小さすぎる、 肌を出し過ぎる、華やかすぎる、派手すぎる
- 装飾:アクセサリーをつけている
- 装備:活動内容にあっていない
- 規則:規則違反の服装

川原や水辺での活動時の服装例 |
水の中に入る時やボートに乗る時の服装例 |
|
・帽子着用 |
・ライフジャケット |
(5) 用具
用具も対象者に適しているか、また不具合がないか、チェックポイントをいくつかあげてみました。以下のような観点で、参加者が使用する用具を評価してみましょう。

- 軽すぎる、重すぎる
- 細すぎる、太すぎる
- 長すぎる、短すぎる
- 滑る、ささくれている
- 固すぎる、柔らかすぎる
- 壊れかかっている

(6)天候
(1)活動前に気象情報を入手する
天候の悪化や雷雲の発生に関しては、かなりの精度で予測できるようになっています。天候の急変による事故を防ぐには、まず、活動前に警報や注意報が出ていないかを確認します。大雨や雷警報が出ている場合は、野外での活動は中止します。少しでも危険がある場合には、変化の予兆に細心の注意を払いましょう。
(2)雷に対する安全対策
積乱雲がもくもくと成長するのが見えたら、落雷の危険があります。AMラジオに「ガガ」という雑音が入ったら、半径50km以内の雲の中で雷が発生しています。「ゴロゴロ」と雷鳴がかすかにでも聞こえ始めたら、雨が降る前にも落雷の危険があります。
落雷の予兆があったら、速やかに安全な場所に避難します。金属類は、そのままを身につけておいても雷を引き寄せません。身につけた金属類に気を払うより、安全度の高い場所に一秒でも早く逃げることが先決です。
○鉄筋コンクリートの建築物、戸建て住宅などの本格的木造建築物
○屋根が金属で出来ている自動車・バスの中
○洞窟(入口付近は危険)
○高さ5〜30mの物体(樹木、建物、電柱など)の保護範囲。物体から4m以上離れます。姿勢を低くして、両足を揃えてしゃがみ、指で両耳穴をふさぎます。
○橋の下、乾いた窪地や溝。ただし、河川の増水や雨水の流入がないかをよく確かめなければなりません。
高さ5m未満の物体(樹木・岩など)の周囲や、テントの中、ビーチパラソルの下。樹木の間に張ったビニールシートの下での雨宿りは厳禁です。
(3)大雨に対する安全対策
川の近くで活動する場合は、川の増水と土砂崩れに注意が必要です。常に水位に気をつけ、雨が降っていなくても水量が増えてきた場合は、活動をやめ避難しましょう。また、増水している川の水が一時的に引いた場合は、上流ががけ崩れでせき止められ、決壊したとたんに土石流が襲ってくる可能性があります。即座に避難しなければなりません。また、急斜面の下や途中は「がけ崩れ」の、急斜面の上は「地すべり」の危険があります。
(4)夏でも凍死の危険があります
高度が100m上がると気温が0.6度、風速が1m増すと体感温度が1度下がります。また、衣類が濡れると体温がどんどん奪われます。夏でも体温の維持ができず凍死した例が数多くあります。悪天候下で活動しなければならない場合は、こまめに小休止をとり、行動食をしっかりとるなど、体力の温存に努めなければなりません。
(7) 場所
自然体験活動は、森、高原や野原、海や川などの水辺、都市の公園等、様々な場所(フィールド)で展開されます。指導者として、あらかじめそのフィールドに潜む危険を把握し、重大事故が起きないようにしなければなりません。
チェックポイントをいくつかあげてみました。以下のような観点で、場所を評価してみましょう。

- 広さ:活動に適した広さがあるか、狭いか
- 深さ:深い、浅い
- 温度:熱い、冷たい
- 気候:暑い、寒い
- 表面・周囲:凹凸がある、障害物がある、物が落ちている
- 風 :強い、風通しが悪い
- 光 :眩しい、明るすぎる、暗すぎる
- 視界:見えにくい、錯覚しやすい、見通しが悪い
- 聞く:聞こえにくい、うるさい

下見(実地踏査)の際は、危険箇所、緊急避難場所、医療機関等の確認、更に、水辺活動が予定される場合は、水温、水深、水質、水底の状況、活動範囲、監視体制の調査も併せて実施します。
なお、フィールドに潜む危険は、第3章で詳しく説明してます。
(8) 交通機関
活動場所までは、徒歩や自転車、電車やバス等を利用して移動することがあります。
(1)徒歩や自転車で市街地の活動場所への行き帰りに遭遇する危険
活動場所に自分で通ってくる子どもがいる場合には、行き帰りの安全を配慮することも必要になります。
子どもの歩行中の事故として最も多いのが、飛び出しによるものです。子どもは、大人と同じように正確に安全を確認したり、危険に反応して行動することが難しいため、交通事故に遭いやすいのです。子どもが事故に遭いやすい場所は
○見とおしの悪い交差点
○駐車車両のあるところ
○狭い路地と広い道路の交差点
○渡る方向に車の一時停止規制のある交差点
です。子どもの視野は大人よりも狭く、視点も低くなります。信号機や標識は大人が基準ですから、子どもの目の高さで安全を確認して教えてあげましょう。
市街地には、居住者や通行人の視線が遮断され死角になっている危険な場所が数多くあり、日中でも犯罪にあう危険性があります。
○大きな建物の脇にあるが、建物の窓の少ない側に面している道路
○見通しをさえぎる植栽に囲まれている道路や公園
○盛土され周辺の道路より一段高くなっている道路や公園
○大規模な無人駐車場
このような地点は、避けるように注意する必要があります。
(2)バス
貸し切りバスによって、活動場所まで移動する場合があります。
いくつかチェックポイントを上げてみました。
高速道路のサービスエリアやドライブインで、トイレ休憩を取るときなどは、他の車も駐車エリアに入ってきます。指導者は、バスの乗り降り、トイレまでの通路の安全確保に努め、子どもたちにも注意を促します。
指導者は、バスの中で、盛り上げようとハイテンションでレクリエーションを行うことがあります。しかし、前夜興奮して、当日寝不足の子どもも参加してきます。その場合、更に体調を崩して活動が困難になることもありますから、そのような子どもにも配慮して、最初は安全に関する注意のみ促し、少し落ち着かせてから楽しませていくことを心がけることも必要です。
(3)電車
電車によって、活動場所まで移動するケースがあります。
いくつかチェックポイントをあげてみました。
人数が多いと少なからず時間がかかるものです。駅は人ゴミで混雑していますし、時間がないと焦って小走りになり、人と衝突したり、はぐれる可能性が高くなります。乗り換える場合は、余裕をもった計画を立てます。
電車は公共交通機関ですので、他の乗客の迷惑にならないよう事前に指導しておくことが必要です。他の乗客とのトラブルにより、気分が台無しになるだけではなく、事故につながる恐れもあります。

