第6章 万が一、事故が起こった時のために

 これまでは、事故の発生を未然に防ぐための知識やチェックポイントについて述べてきました。
 この章では、万が一、事故が起こった時に、被害を最小限に抑えるための発生時に備えた対策と、事故発生時の対処について説明します。

(1) 事故・ケガにであった時の対処法

 どんなに注意しても、やはり事故が起きることはあります。その場合、初動が被害者を救済できるか否かを左右します。救助者が最も気をつけなければならないことは、以下の3つのポイントです。

(1) 冷静になる
 適正な判断ができなくなると、場合によっては被害を拡大してしまう恐れがあります。
(2) 自分自身の安全管理をする
 体力のある大人や指導者の場合、意外と忘れがちですが、2次災害を防ぐ為にも、十分に注意が必要です。
(3) 被害者以外の人たちの安全管理をする。
 どうしても被害者の方に目を奪われがちですが、まずは、それ以外の人たちの安全管理を十分に徹底したうえで救助に向かう必要があります。

(2) 緊急連絡網

 万が一の時のために、緊急連絡一覧を作成しておくことが大切です。活動の場所や内容等にもよりますが、事前に調べてリスト化しておきたい連絡先は次のようなものです。

消防・救急 119番
警察 110番
海上保安庁
(海上における事件、事故の緊急通報用電話)
118番
災害用伝言ダイヤル
(地震、噴火などの被災地への電話がつながりにくい場合に利用できるサービス)
171番
本部 ○○-○○○○
保護者、(受託事業の場合)クライアント ○○-○○○○
保険会社 ○○-○○○○
最寄りの医療機関(複数箇所) ○○-○○○○

(3) 事故が起こった時の基本的対応

事故が起こった時の基本的対応

(4) 救命処置チャート

救命処置チャート

(5) 事故対処能力の向上

 いざと言う時のために、指導者やスタッフは消防署や日本赤十字社などで実施している止血法、心肺蘇生法などの救急処置トレーニングを受けておきたいものです。また、使用施設の防災訓練などへも積極的に参加しましょう。
 以下は、基本的な対処法を簡単に示したものですが、必ず事前にトレーニング等を受け、詳細を学んでおくことが必要です。

(6) 救急法

 傷病者を速やかに救助し、正しい応急手当をして、医師に渡すまでが救急法の範囲です。
《手当ての基本》
(1) 傷病者の観察
・話しかけ、直接触れてみて、脈拍の状態や熱の有無を調べます。
・意識、呼吸、脈拍、顔色、大出血の有無を調べます。
・傷、出血、骨折、打撲、痛みなどの有無と状態(部位、程度)、手足が動くかどうか、傷や病気の起こり方などをよく観察します。
・意識がある場合は、事故発生状況を傷病者に尋ね、参考にします。
・多数の傷病者がいる場合は、緊急性の高い重傷者を優先します。
(2) 傷病者の寝かせ方
 傷病者の状態や傷に応じて、最も良い姿勢を保つことが必要です。
(3) 保温、加温
 体温を保ち、寒がらせないようにします。必要に応じて加温しますが、発汗させてはいけません。
(4) 飲食物
 原則として傷病者には飲食物は与えてはいけません。特にアルコールは禁物です。
 また、傷病者を力づけ安心させることも大切なことです。できるだけ傷病者に血液や傷や嘔吐物を見せたりせず、動揺させないように注意しましょう。また、状態を悪化させないためには安静が必要です。手荒な接し方をするのは避けましょう。

(7) 心肺蘇生法

 意識が障害され、あるいは呼吸・循環機能が著しく低下または停止し、まさに生命が失われようとしている者に対し、直ちに気道を確保し、必要に応じて人工呼吸と心臓マッサージを行い、応急的に傷病者の生命の維持を図る手当てのことです。
 心肺蘇生法は、気道確保・人工呼吸・心臓マッサージから成ります。傷病者の意識がなく、気道を確保しても普段どおりの呼吸をしていない場合は、「人工呼吸2回→心臓マッサージ30回+人工呼吸2回」を行います。(以前、心臓マッサージは15回と定められていましたが、国際基準の変更に合わせて変わることになりました。また、人工呼吸に抵抗がある場合は、マッサージだけでも可と変更になっています。)
 また8歳未満の子どもの場合は方法(回数等)が変わりますし、高齢者の場合の注意点などもあります。消防署や日本赤十字社の講習会を受講しておきましょう。

(8) 止血

 主な止血法には、直接圧迫止血法と間接圧迫止血法があります。直接圧迫止血法は、傷口に清潔なガーゼやハンカチを直接強く押し当てる方法です。傷の真上にガーゼなどを当てて、5分間は途中で絶対に開けずにしっかりと押さえて下さい。出血が止まったら、清潔なタオル等に変えて病院へ行きます。
 直接圧迫止血法で止まらない場合は、間接圧迫止血法で処置を行います。間接圧迫止血法は、傷口より心臓に近い動脈を指や手で圧迫して血液の流れを止めます(詳しくは専門書をご覧ください)。それでも出血が止まらない場合は、直接圧迫止血法と間接圧迫止血法とを併用して止血します。なお、血液には決して触れぬよう、手袋またはレジ袋などを利用することが必要です。

(9) 熱中症・鼻血の対応

 フラフラになり赤い顔をして体が熱くなっているのに発汗していない場合は、身体がオーバーヒート状態の「熱中症」です。すぐに日陰の涼しい場所で横にし、身体を冷やすなどの対応が必要です。場合によっては、死に至ることもありますので、症状によってはすぐに医療機関に連絡しましょう。
 特に子どもはちょっとしたことで鼻血を出します。鼻血が出たら、座るなどして少しうつむかせます。仰向けにすると血が喉の奥に流れ、吐き気をもよおしたり、固まった血が喉をふさいだりすることがあります。上を向かせたり、首の後ろをたたいたりということは避けて下さい。そして、脱脂綿やガーゼ等を鼻につめ、小鼻をつまみます。ほとんどが心配ないものですが、長時間血が止まらない、何回も繰り返す等の場合は、耳鼻科へ連れていくことが必要です。

(10) 保険に関する事項

 自然体験活動中に何らかの事故が起き、参加者の身体・財産に損害が発生した場合、行事の主催者および当該施設の管理者は法律上、道義上の責任を負うことがあります。
 今や、自然体験活動の主催者等にとっても、保険に加入することは、単なる金銭的リスクヘッジの方策にとどまらず、主催者の行事運営能力の重要な要素と言えるでしょう。
 具体的には「傷害保険=参加者や指導者が事故にあった場合、死亡保障や入院・通院費などを保障する保険」や「賠償責任保険=事故の原因として指導ミス・管理ミスが問われ、被害者から損害賠償請求をされたときに適用される保険」への加入が必要です。いずれも保障内容や保障金額、加入方法(単発加入、年間加入など)が異なるものが多数ありますので、保険会社によく相談してみましょう。